木村峻郎弁護士が解説!「(時事)大手広告代理店 違法残業事件(略式起訴と正式起訴)」

木村峻郎先生が解説 時事テーマより
大手広告代理店 違法残業事件ニュース 「略式起訴」と「正式起訴」の違い

大手広告代理店の「違法残業事件」が連日メディアで報道されております。
”略式起訴”と”正式起訴”の違いを解説していきたいと思います。

”略式起訴”とは
解説※略式の裁判を請求することです。即日1回で結審します。50万円以下の罰金または科料が科されます。
請求の書類
・略式命令請求
・即決裁判手続の申立
・交通事故即決裁判請求

参考条文 刑事訴訟法
第六編 略式手続
第461条  簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。
第462条の2  検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。
2 被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
第462条  略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。
2 前項の書面には、前条第2項の書面を添附しなければならない。
第463条  前条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
2 検察官が、第461条の2に定める手続をせず、又は前条第2項に違反して略式命令を請求したときも、前項と同様である。
3 裁判所は、前2項の規定により通常の規定に従い審判をするときは、直ちに検察官にその旨を通知しなければならない。
4 第1項及び第2項の場合には、第271条の規定の適用があるものとする。但し、同条第2項に定める期間は、前項の通知があつた日から2箇月とする。
第463条の2 前条の場合を除いて、略式命令の請求があつた日から4箇月以内に略式命令が被告人に告知されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。
2 前項の場合には、裁判所は、決定で、公訴を棄却しなければならない。略式命令が既に検察官に告知されているときは、略式命令を取り消した上、その決定をしなければならない。
3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第464条  略式命令には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑及び附随の処分並びに略式命令の告知があつた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができる旨を示さなければならない。
第465条  略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができる。
2 正式裁判の請求は、略式命令をした裁判所に、書面でこれをしなければならない。正式裁判の請求があつたときは、裁判所は、速やかにその旨を検察官又は略式命令を受けた者に通知しなければならない。
第466条  正式裁判の請求は、第一審の判決があるまでこれを取り下げることができる。
第467条  第353条、第355条乃至第357条、第359条、第360条及び第361条乃至第365条の規定は、正式裁判の請求又はその取下についてこれを準用する。
第468条  正式裁判の請求が法令上の方式に違反し、又は請求権の消滅後にされたものであるときは、決定でこれを棄却しなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
2 正式裁判の請求を適法とするときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
3 前項の場合においては、略式命令に拘束されない。
第469条  正式裁判の請求により判決をしたときは、略式命令は、その効力を失う。
第470条  略式命令は、正式裁判の請求期間の経過又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生ずる。正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも、同様である。

”正式起訴(公判請求)”とは
解説※いわゆる正式の裁判を請求することです。”略式起訴”に対して、”正式起訴”を「公判請求」といいます。

“不起訴”とは
解説※検察官が裁判所に対して、刑事裁判を請求しないことをいいます。

(1)訴訟条件が欠如する場合
被疑者が死亡した場合、裁判権がない場合、親告罪において告訴がない場合などには、起訴することができません。

(2)訴訟条件が存在する場合
①被疑事実が罪とならない場合
②犯罪の嫌疑が認められないか、不十分である場合
③刑の免除の事由がある場合

2 ”起訴猶予”とは
上記(2)の①②③以外の場合であって、”起訴の必要がない”と検察官の裁量によって”不起訴”とする場合をいいます。
参考文献刑事訴訟法 第248条(起訴猶予)
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

―記事毎日新聞2017年7月12日 抜粋引用
◇東京簡裁「略式命令は不相当」と判断 正式裁判に
 大手広告代理店を巡る違法残業事件は12日、東京簡裁が「略式命令は不相当」と判断し、公開の法廷で審理されることになった。異例の判断に、略式起訴した検察からは驚きの声が漏れ、労働問題の専門家からは「社会へのメッセージになる」と評価する声が上がった。

 今回の簡裁の判断について、ある検察幹部は「被告が否認しているわけでもないのに、略式起訴が正式な裁判になるのは珍しく、意外だ」と驚いた様子。別の検察幹部は「社会的注目を集めた事件だったので、公開の法廷で行うべきだという考えで出した判断なのかもしれない」と推測し「検察としては証拠もそろえて問題なくやっており、略式でも正式な裁判でも影響はない。粛々と公判に向けて準備する」と話した。
 あるベテラン裁判官は「今回の電通事件は、事案が複雑で慎重な審理が必要なケースだと判断されたのではないか。あり得る判断だと思う」と語った。簡裁は今回、「不相当」とした理由を明かしておらず、別のベテラン裁判官は「例えば事実認定のために証拠調べが必要な場合など、どういう時に『不相当』と判断するのかは、裁判官の間で共通認識がある。それを踏まえて淡々と判断したのではないか」と分析した。
 日本労働弁護団事務局長の嶋崎量弁護士は「長時間労働は人の命に関わり、刑事罰も科されうる問題であるとの認識が違法残業事件で広まった。公判が開かれればメディアでも報道され、労働問題を軽く考えてはいけないという社会的メッセージが発信される」と簡裁の判断を評価する。
 その上で「政府は残業時間の上限を法定化して罰則を設ける方針だが、使用者が労働者の労働時間を適正に把握していない現状では『隠れ残業』が増える恐れがある。公判を通じ、社会で過労死の原因と対策を考える必要性を感じてもらいたい」と話している。

◇大手広告代理店違法残業事件「非公開」から「公開」へ、実態解明に期待
大手広告代理店違法残業事件、公開の法廷で審理に
悲惨な過労死を生み出す違法残業は許さない、という社会的機運を高める上でも、大手広告代理店違法残業事件が非公開の書面審理で行われる「略式命令」の手続きではなく、公開の法廷で審理されることになった意義は大きい。どのような労働環境が一人の尊い命を奪ったのか。法廷での実態解明に期待したい。
今回の事件で、検察当局は早い段階から法人を略式起訴にするとの方向性を決めて捜査していた節がある。検察は、厚労省の「かとく」が過去に捜査した5事件で、いずれも法人を略式起訴しており、今回も前例を踏襲したように見える。
起訴とは、検察官が裁判所に対して刑事裁判を請求すること(公訴を提起すること)を意味しますが、これは2つに大別されます。
-抜粋引用