木村峻郎弁護士講演「仲介業務をめぐる法律問題PartⅨ-2」

木村峻郎講演 仲介業務をめぐる法律問題PartⅨ-2

次回に引き続き、不動産登記法のポイントを木村峻郎弁護士が解説していきます。

3 不動産登記のチェック体制
(1)登記官の審査は「形式的審査制度」
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不動産登記申請に対する登記官の審査は、その登記が受理されるために揃えておくべき書類が揃っているか、という範囲にとどまる。
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必要書類が揃っていれば、その書類の入手経路や、登記が実体に合致しているかは無視され、登記は受理されてしまう。

登記官は必ずしも偽造書類を完璧に見抜くことができる訳ではない。

(2)司法書士、金融機関の本人確認義務
ア 司法書士は本来、登記申請にあたり、関係当事者の意思確認をすべき義務を負っている。
イ 金融機関も融資等を実行するにあたり、社内において借入や保証の意思を確認することになっている。
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司法書士も売主または買主、もしくはその双方から依頼を受けて決済に立ち会っており、取引を不成立とすることには躊躇いがあることが通常。
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登記申請意思や売主と本人の同一性等に若干の疑義があったとしてもそのまま取引を進めてしまう危険性もある。

 (3)司法書士が、売主が拒否したにも関わらず登記を申請した事例
   (当初の契約内容)

 A─1億3000万円で売買契約→B
    (手付金1300万円、中間金2700万円)
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   (変更後の契約内容)
                    A
                    │
              売買代金債権を担保する抵当権
                    ↓
       A─売買による所有権移転→B

設例3 AB間で、A所有不動産をBが購入することとなり、手付金は支払われたが、Bの資金調達が想定通り行かなかったことから、約定が変更となり、Bが不動産を買い受けると同時に一部代金が支払われ、残代金についてはAを抵当権者とする抵当権設定登記を行って担保することとされ、Aは事前に司法書士に委任状を提出し、決済日を迎えた。
しかし、決済の場で、支払われた金額が約束されていた金額に足りていなかったことから、Aが登記申請を中止するよう、司法書士に求めたが、司法書士はこれを受け入れず、Bへの所有権移転登記が申請されてしまった。

4 不動産登記の効力の限界
 (1)公示の原則
-登記を信頼して購入しても原則として保護されない-
不動産登記の内容のみを信頼して不動産を購入したが、実際には登記上所有者として登記されていた者は真の所有者ではなかったことが判明した場合、購入者は、真の所有者との関係で当該不動産の所有権を主張できない。
 (例)東京地方裁判所平成21年10月29日判決
    
       X─所有権移転登記→A─売買─B

   X所有の土地建物について、平成20年3月24日付でA名義とする売買による所有権移転登記がなされ、平成20年6月末日までに明け渡す旨の明渡承諾書が提出されていた。
その後、平成20年6月26日、AからBに対して売買を原因とする所有権移転登記が申請され、これが受理された。そこで、BがXに対して明渡承諾書に基づいて明渡を求めたところ、Xは代金を受け取っていないとしてこれを拒否した。
実際にはX→Aの売買当時、Xは重度の認知症に罹患していて意思能力がなく、X→Aの売買は、Xの子Cが自身の事業資金調達のために書類を用意して行わせたものであった。
Bは、登記がA名義であることを信頼して購入したものであっても、本件土地建物を有効に取得することは出来ない。
 (2)仮登記、仮差押、仮処分
 仮の登記のため、これらの登記がなされている物件について処分することは可能であり、登記も受理される。
 だが、その後に仮の登記が本登記になると、仮登記後になされた登記は全て抹消されてしまう。

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