木村峻郎弁護士講演!法律を活用した「遺産分割や事業承継における税理士の営業,遺言能力,意思能力」についてpartⅢ

木村峻郎弁護士講演 法律を活用した「遺産分割や事業承継における税理士の営業」についてパート3

このテーマも今回で最後です。引き続き、木村峻郎先生が丁寧に説明していきます。

第1<遺言能力>
問)将来Aの相続が発生したときに「次男Dとの争いが生じる」ことを危惧したAの長男Cは、「Aに遺言書を作成させたい」と考えているが、Aは認知症を患っている。この場合、どの様に対応したらよいか。(PartⅡ P5第5の問1の問題)

回答)遺言書を有効に作成するためには、遺言能力がなければならない。
  <遺言能力を有しない者の具体例>
①15歳未満の者(民法961条)
②長谷川式(HDS-R)のテスト(別紙参照)で「10点未満の場合は遺言能力が無い」と判断される。又「15点未満の場合は疑義が生じ」、裁判ではカルテ等により遺言作成時の判断能力について鑑定を行い、その有無が判断される。

そこで、とりあえず受診してAに「長谷川式テスト」を受けることをアドヴァイスし、その結果により対応を決定する(P2以下参照)。

第2<意思能力>
問)Cは認知症を患っているAの相続対策のため、Aの生存中にAの所有する不動産を第三者に売却する計画をしているが、買主から「Aの判断能力に問題があるかも知れない。そこで医師の診断を受け、必要があれば成年被後見人の申立をしてくれなければ購入することができない」旨の申出を受けた。この場合、どの様に対応したらよいか。

1.意思能力とは?
契約を締結することに必要な判断能力である。これは売主として、例えば売買契約を締結すれば「代金の支払いを受けることが出来るが、売却物の所有権を買主に移転するものである」ことを理解したうえ、売買したら良いか否かを判断できる能力。

これが欠けていると、契約を結んでも無効

2.意思能力の有無の判断の目安
※長谷川式簡易スケール(HDS-R)
①10点以下  意思能力なし
②11~14点 意思能力がない可能性が高い
③15~19点 意思能力がある可能性が高い

3.成年後見人等の申立て
    ①申立権者
申立権者は限定されている。親族が申立をする場合には、4親等以内の親族等(いとこでも可)

    ②申立から選任までの手続の流れ
     医師との面談、診断書の取得
          ↓
     その他必要書類(戸籍、登記されていない旨の証明書、通帳等)を揃えて家庭裁判所に申立て
          ↓
     家庭裁判所が本人、後見人候補者との面接
          ↓
     家庭裁判所が成年被後見人開始決定を行う

③必要な費用と期間
    申し立て~開始決定確定までは概ね2か月程度。
    実費としては7000円~9000円程度。
その他戸籍謄本等の取寄せ費用。
  (判断能力の程度によって異なる。)

    ④誰が後見人に就任するのか
          ↓
     ㋑推定相続人間で後見人候補者に争いがなく(例えば後見人を長男とする合意)、成年被後見人の財産額が5000万円以下であれば、申立人が推薦した者
     ㋺推定相続人間で後見人候補者に争いがある場合、或いは財産額が5000万円を超えるときは、裁判所の名簿に登録されている第三者(主に弁護士)が後見人を選任
     ㋩本人の身上介護が必要な場合、後見人選任で被相続人の保有財産が高額の場合は、後見人の事務分掌が行われる場合がある。
     <例>
1.身上監護は親族の後見人
2.財産管理は弁護士と2人の後見人
    
⑤本人が所有する不動産を売却をする場合の留意点
本人の自宅、もしくは現在は介護施設に入居しているが、従前は自宅として利用していた不動産の売却には「家庭裁判所の許可を得なければならない」旨の制限がある。そこでその場合には、売却代金の使途を明確に定めておく必要がある。
 
 <例>
    「要介護5の者」が自宅不動産を売却し、その売却代金を利用して介護施設に入所する場合等。

<類似問題>
父親Aが遺言を遺さず死亡したため、母親B、子CDによる遺産分割協議をする必要が生じたが、母親Bはかねてより認知症を患っている。この場合、どの様に対応したらよいか。
  

以上

アイランド新宿法律事務所