木村峻郎弁護士講演!法律を活用した「遺産分割や事業承継における税理士の営業,税務署と裁判所の違い」について その1

木村峻郎弁護士講演

法律を活用した「遺産分割や事業承継における税理士の営業」について その1

木村峻郎弁護士が、法律を活用した「遺産分割や事業承継における税理士の営業」について解説していきます。

<税務署と裁判所の取扱いの違いを踏まえた相続発生前の営業について>
第1 相続実務における裁判所と税務署の取扱の違いを知る
1.相続不動産の評価方法の違い
(1)土地
   ①税務署=路線価による評価
        ※小規模宅地の評価等の特例も適用される
   ②裁判所=遺産分割時における時価による評価              

(2)建物
   ①税務署=固定資産税評価額
   ②裁判所=収益物件であるか否か等の一切の事情を考慮して遺産分割時における時価による評価
    ※市場性・収益性・費用性を踏まえ「取引事例比較法」、「収益還元法」、「原価法」がある。

2.裁判所の時価評価の方法
 (1)調停や和解における評価方法
◎簡便な実務上の取扱
   ①路線価によるもの
   ②固定資産税評価額で評価するもの
   ③公示価格で評価するもの
(2)鑑定の実施
裁判所が保管している鑑定人名簿の中から裁判所が鑑定人を選任し、鑑定を行わせる。
(短所)
①選任手続が煩雑で時間がかかる。
②鑑定費用は裁判外で依頼する場合と比べて高額となる。

第2 被相続人が相続人に対し行った「相続開始の10年前の贈与」は相続財産に算入するか
1.生前贈与の取扱(特別受益)
(1)税務署=相続が開始するより前の3年以内に為された贈与は相続財産とする。
(2)裁判所=特別受益に該るものは、相続開始の10年以上前に為された贈与であっても、相続財産として扱う。(民法903条)
       ※この場合受贈者には既に相続財産の前払いを受けたものとして取扱い、受贈者の相続分から特別受益額を差引く。

※特別受益に該らない場合には、相続が開始する前3年以内の贈与であっても、それは相続財産として扱わない。

第3 被相続人Aが「相続人Bを受取人」として、保険会社と生命保険契約を締結していたため「Bが支払を受けた保険金」の取扱
(1)税務署=みなし相続財産として、課税財産となる。(但し、相続人1人につき、500万円の非課税額がある。)
(2)裁判所=①Bが支払を受けた保険金は原則として相続財産ではない。
  ※受取人を単に「相続人」とだけ指定して「相続人Bと は記載していなかった」場合であっても、被相続人の死亡と同時に相続人BCの法定相続分に従った固有の権利となるので相続財産とはならない。
           ↓
     ②しかし例外的に保険金の支払を受けることを「特別受益」として取扱い、相続財産として処理される場合がある。

<例外的に特別受益と認めた最高裁判所の判例>
相続人Bは、被相続人が契約した生命保険の受取人になり、その保険金を受領したことによって遺産の総額に匹敵する巨額の利益を得ており、(以下省略)、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合、Aが受け取った死亡保険金は特別受益に準じて持戻しの対象となる。

第4 死亡退職金の取扱
(1)税務署=みなし相続財産として課税財産となる。(但し、相続人1人につき、500万円の非課税額がある。)

(2)裁判所=「退職金支給規定により定められた受給権者(例えば配偶者)の固有の権利となる」ので、相続財産にはならない。

続く

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