木村峻郎弁護士講義「遺留分の放棄及び遺言信託⑴,有利な相続,遺言書の活用」

木村峻郎弁護士講義
「遺留分の放棄及び遺言信託⑴,有利な相続,遺言書の活用」

木村峻郎 講義 遺留分の放棄及び遺言信託 

木村峻郎弁護士が、相続について説明していきます。   

著 木村峻郎(弁護士 アイランド新宿法律事務所)

第1<総論>
◎有利な相続とは?
①相続人間の紛争を未然に防止する。
②特定の相続人の利益を確保する。
③相続税の支払を軽減する。 
④相続債務の支払を軽減する。 etc.

第2<相続人間の紛争防止=遺言書の活用>
1.遺言書作成のポイント①=遺留分への配慮
 ◎遺留分への配慮が紛争防止の最大のポイント!

◎遺留分減殺請求権が行使されたときに生じる不利益の具体例
※遺留分権利者は相続不動産の全てに、遺留分割合に応じた自己の権利(共同所有権)を有している。
 そのため
   ①不動産売却が出来ないため、相続税の支払が困難となる。
   ②相続税の支払のために行う物納も出来ないことになる。etc.

2.遺言書の作成のポイント②=紛争の防止のテクニック

1)例えば紛争防止のためには、遺留分価格に相当する、必要性の低い土地を相続させることも已むを得ないと考えたとき。
           ∥
  「Bが遺留分減殺請求権を行使した場合には、後記土地をBに相続させる。」旨の条項を遺言書に規定する。

2)被相続人が会社を経営している場合「議決権がない株式」を発行して、「議決権がある株式を長男Aに、議決権のない株式を次男Bに相続させる」旨の遺言書を作成する。

3)生命保険契約の利用
被相続人甲が生命保険会社と契約し、生命保険金の受取人は「介護に努めた長男Aとする」という内容にする。なお、生命保険につき裁判所は税務署と異なり相続財産ではないとしている。
etc.

第3<「被相続人の介護に努めた相続人」の寄与分>
1)被相続人の療養看護に努め、或いは被相続人の資産形成に協力した相続人は「寄与分を取得することが出来る」ので、相続において有利に取扱われる。
            ∥
しかし「寄与分として取得できる金額がいくらであるのか」その金額について相続人間に争いが生じ、長期間の裁判を強いられる。そのため、相続人Aが寄与分として取得する金額を、予め被相続人甲との契約等により、明確に定めておくことが、相続人Aに有利となるとともに無用な紛争を防止できる。

2)療養看護に関する契約書の作成
被相続人甲の長男A夫婦は「長年にわたり両親甲、乙と同居し、その介護に努めてきた」場合、遺言書で寄与分を定めることの他、更に「生前に甲、乙とAとの間で、介護契約書を作成し、例えば以下の内容の契約書を作成する」ことが効果的な場合がある。

【介護契約の例】
第1条) 介護契約者長男Aは父甲、母乙と同居し、その介護に努める。
第2条) 甲(又は乙)はAに対し、報酬として1ヶ月金60万円を3条の規
定に従い支払う。
第3条) 前条の報酬は、甲(又は乙)が死亡したときに、甲又は乙の所有す
る財産が残存していることを条件に、Aが優先的に弁済を受ける。

※父と母との契約を別々に作成する。
※税務申告の問題

第4<遺留分の放棄>
民法1043条 
1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を得たときに限り、その効力を生じる。
2.共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

◎遺留分の放棄は①相続開始前に②相続人が③家庭裁判所の許可を得て行う。
     ∥
1)遺留分放棄の効果

2)例えば相続人Bが遺留分の放棄を行うと、「Aに全財産を相続させ、Bには何も相続させない」旨の遺言書の作成がされれば、Bは遺留分がないため、全く遺産を取得することができなくなる。

3)遺留分を放棄しても遺言書がなければ、遺留分を放棄した者も法定相続分に従った相続をすることができる。

※遺留分を放棄しなくても相続人が相続開始後に相続を望まない場合には「相続 放棄」をすれば足りる。

4)実務の運用
家庭裁判所は厳格な要件を定め、遺留分放棄を簡単には認めない。例えば、相続分に相当する財産を既に交付する等の場合に、家庭裁判所は許可をする。

その2へ続く

以上

アイランド新宿法律事務所