木村峻郎弁護士のひとこと「刑事政策講義改訂版その1」

木村峻郎弁護士のひとこと

刑事政策講義 改訂版
(法令改正により、現行の法令とは違う場合があります。)

はじめに

私が長年受け持ち続けてきた「合格講座」(早稲田司法試験セミナ ー)で、私は立法趣旨・保護法益・制度趣旨といった価値判断の基準となる原理・原印功、らなす法解釈論の展開及び簡潔明瞭な論述、 更にこれを制限時間内で如何に行うかということの重要性を強調してきた。何故ならば、司法試験が法律実務家たるに必要な能力ないし素養を備えているか否かを判断する試験であり、この法律実務家に要求されているものが、まさに以上の三点にほかならないからである。このように法律の学習においては「原理・原則からの解きほぐし(法解釈)」の重要性を繰り返し述べてきた。

ただ、ここで注意すべきことは、原理・原則からの条文解釈・論理展開を中心とする法律科目と異なり、刑事政策は犯罪防止、犯罪者の改善更生を目的とする実践学科であるという点である。
即ち、 刑事政策においては、極論すれば、いかに理論的に優れていようとも、それが実際上の犯罪防止に少しも役立たなければ全く無意味なものとなる反面、仮にいかに非論理的なものであっても、犯罪防止に資するものであれば、それが最高のものと評価されるのである。

しかしながら、原理・原則という基本価値に照して考察するという点においては刑事政策も全く同様であり、特に他の法律科目と区別する理由はない。即ち、いかなる政策を講ずるべきかは、絶えず犯罪防止、犯罪者の改善更生という基本価値に照して検討することが何よりも必要なことだからである。

以上のような着眼点から生まれたのが、旧著「合格講座」シリー ズの「刑事政策」(昭和56年刊)である。

「刑事政策」の出版以来早四年の歳月を経て、刑事政策は犯罪及び処遇状況の変化に伴い有効な対策を講じていかねばならない実践学
科である。それ故、本書を出版し、内容を追加、補充し及びその一部を書き改めることにより、更に一層充実させることにした。

(終)

アイランド新宿法律事務所代表弁護士木村峻郎