木村峻郎弁護士講義「会社法第11回,取締役の協業避止義務,取引」

木村峻郎弁護士講義
「会社法第11回,取締役の協業避止義務,取引」

第11回会社法

木村峻郎弁護士が厳選した取締役の競業避止義務等について、説明していきます。

第1 取締役の競業避止義務(会社法356条)
1.「自己又は第三者のため」とは?
 ①結論=「自己又は第三者の計算」という意味である。
②理由=競業行為が会社の名義で為されていても、それが自己又は第三者の計算で為されているならば、取締役が会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図る危険性がある。

2.「事業の部類に属する取引」の意味
 ◎市場において会社と競業するものを意味する。

①会社が定款で目的として掲げていても、完全に廃業しているものは含まない。しかし一時的に休業している場合や開示準備に着手しているものは、会社の利益を保護する必要から、これに該たる。
②「会社の事業の目的と同種又は類似の商品・役務の提供」
③取締役が会社の営業地域と異なる地域での同種営業を行う場合

     会社がその地域に進出を決定し、その準備行為を行なっていれば「事業の部類に属する取引」として会社の利益性を図ることが必要である。しかし会社に進出予定がない場合には「会社の利益を犠牲にする」ということはないので、競業避止義務はない。

◎取締役が複数の競業行為を行う場合の取締役会の決議方法
取締役の承諾は「将来の利益が予測出来る場合」には一括して承認することもできる。

3.会社の取引機会の奪取
会社が購入すべき土地を探していたところ、取締役が個人的に入手した情報を会社に提供せず自己(又は第三者)のために購入してしまうことは、忠実義務に違反するであろうか。いわゆる「取引の機会の奪取」の問題である。
      
※そもそも忠実義務とは
355条は取締役の忠実義務を規定している。
  ①これは民法の規定する善管注意義務(民法644条)を明確化したものである。
  ②その有無は具体的事案において個別的に判断されなければならないものである。
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そして常勤取締役は自己の能力の全てを捧げるべきで、個人の資格に基づいて入手した情報も会社に提供する義務がある。
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従って忠実義務違反となる。

4.従業員の引き抜き行為
  部下への退職勧告は、取締役の退職の事情や退職従業員と取締役の関係(自ら教育した部下か否か)等、総合事情を考慮して判断すべきである。

第2 代表取締役の権限(349条)
◎取締役会の決議を経ないで為した代表取締役の行為の効力
1.募集株式の発行及び重要な財産の処分
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代表権があるので原則有効
理由=取引の安全を重視する必要がある。
相手方は、取締役会の決議の有無を知り得ない。
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相手方が決議を経ていないことを知り、又は知り得べかりしときに限って無効とする。
  
以上

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